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【手塚治虫】アバンチュール21

手塚治虫が描く動物の可愛さは、どれも本能的に直接訴えかけてくるものばかり。ユニコやレオ、W3の3匹などの有名キャラクターや、短編にちょっと出てくる脇役の、もしくは背景の動物まで、どれも魅力的。その中にあって、アバンチュール21に登場するウサギのミミ、耳男(ミミオと読み、ミミオトコではない)の可愛さは格別。

動物を擬人化したらば、なんであっても可愛いだろと思うのだけれども、耳男ミミオの魅力は全方位に向けて最強。耳男ミミオの媚態としか表現できない表情と動きは、今でも最強の萌え。

物語は、主人公の少年、耳男ミミオらが地球貫通列車に乗って地底を探検するアドベンチャー。ちなみにタイトルは、英adventure アドベンチャー = 仏aventure アバンチュールから。地底人との出会いと対決、仲間の裏切り、そして地底からの脱出劇。ストーリーもしっかりしており、サスペンス的な要素も含まれているが、この物語は耳男ミミオの幼く無垢な存在でありながら、どこか艶かしい魅力に尽きるだろう。

ベストシーンは、改造手術を終えた耳男ミミオが主人公と対面するシーン。指が5本あることを確認されているときの目を伏せた表情に注目。また、地底に潜る際に、他の乗組員から自分だけ動物扱いされることに不満に思った耳男ミミオが、カツラを被ってくるシーン。悲しそうに自分の耳を切ろうとしてみたり。そして、悲しいラストシーン。最後の言葉を語る耳男ミミオ。ラストページ、少し引いた絵は、絶妙のリアリティーを生み出す効果があり、自分がこのシーンを目撃してしまったかのような感傷が胸に残る。





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【手塚治虫】MW

このマンガのタイトルとなっているMW(ムウ)とは、戦争用の兵器として開発された毒ガスの名前。このMWにより島民が全滅したとある島で、偶然にも生き残った二人の少年を主人公に、物語は進められていく。
成長した少年たち。その一人結城美知夫は、普段は銀行員として真面目に働いるのだが、その正体は冷酷な殺人鬼。もう一人の男、賀来は島でのショックを癒すために教会に身を投じ、神父となっている。

殺人鬼という裏の顔を持つ結城美知夫だが、賀来には心を許しており、また体も許し(同性愛)、毒ガスの島から二人だけが生き残ったという共同体的意識からか、唯一無二の関係となっているのだ。毒ガスの難を逃れ生き残ったとはいえ、毒ガスの影響で肉体的に精神的に蝕まれていく結城美知夫。殺人鬼となった彼の真の目的は、毒ガスMW漏洩事故の責任者とその家族を、次々と殺害していくことにあったのだった。

この作品が手塚治虫のマンガの中でも異色なのは、手塚自身がこれまでのイメージを捨て(いまだに鉄腕アトムのイメージは強いわけだが)、徹底的に悪を描こうとしたことにある。またその悪の根源である、主人公の結城美知夫のキャラクターが非常に特異だということ。
このマンガが連載された当時の時代と比べ、同性愛についての理解が進んでいる現代であっても、メジャーなマンガ家がメジャーな紙面で、ストレートに同性愛の男二人を主人公に据えたマンガはなかなか見当たらない。連載当時、このマンガのインパクトがどんなだったのだろうか。
結城が服を脱ぎ捨ててベッドに横になり、賀来を誘惑するシーンなどは、衝撃的であり、手塚の本気度がよくわかる。

同性愛というある意味でのギミックだけがウリというわけではない。結城美知夫が行う巧妙な犯罪描写の素晴らしさや、毒ガスMWを取り巻く政府レベルでの陰謀を背景とした読み応えのあるストーリー、テンポのよい展開で、ぐいぐいと物語に引き込まれる。また、同時に読者は、結城美知夫という人物自身の魅力、美貌と明晰な頭脳に、引き込まれていくのだ。

良心のかけらも感じられない結城美知夫。彼の良心の部分をすべて背負うかのような、いわば結城の影(といより光か)ともいえるのが、もう一人の主人公である賀来神父。彼が代表するのは、人間の弱さや、人の心にひそむ原罪の意識。結城美知夫が悪の道に進んだのは、自分にも原因があると考え、更生させようと考える賀来神父。しかし実のところ、結城を愛し、その関係から逃れられない賀来神父。結城を救うという思いは、ただ彼と一緒にいたいがための言い訳にすぎない。賀来神父の良心の光は、結城美知夫を照らし出しすのだが、その結果は結城の闇をますます濃くするだけ。

ラストの思わせぶりなシーンを見せられると、もっと読みたい!と思ってしまうのが人情。賀来神父を失った結城美知夫に行く先はあるのか?ただただ暴走と破滅のみが待っているのか?手塚自身が「描き切れなかった」と語っていることから、この後もいろいろな展開が考えられていたことを想像すると、妄想が膨らむ。禁断のピカレスク・ロマンの大傑作。必読。






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【手塚治虫】日本発狂

不穏で煽るような魅力あるタイトルだが、内容とはあんまり関係しない。というか、発狂しない。

偶然に幽霊の行進を見てしまった主人公の少年イッチ。死後の世界へ行くことになった彼は、その世界で圧政に苦しむ人々=幽霊たちのレジスタンス活動に協力する。物語の後半では、死後の世界の人々=幽霊たちを導いて、死前の世界(つまりは今世)へやって来る。そして、生の世界の人々と死後の世界の人々=幽霊たちの共存生活がはじまるのだが…

本作品で、霊とは?魂とは?死後の世界とは?をストレートに描いている。ここで描かれる死後の世界は、死前の世界となんら変わらない。終わらない争い、そして戦争だ。また、死んだ人間も恋をしたり、再び死んだり…死後の世界の死は、存在の無である。

どこか軽くふざけた感じとシリアスが、物語の中では微妙に揺れる。プラスにもマイナスにも振れず、いい加減に作られた、妙な味わいを残す作品。物語の最後の最後、生きている人々との軋轢のため、追い出された死後の世界の人々=幽霊たちとイッチはどこへ行くのか?この行く先を知るためにも、読んでみるべし。





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【手塚治虫】ばるぼら

ばるぼら。その意味はわからないのだが、不思議な言葉の響きに妙に惹きつけられてしまう。初めて聞いたのに、ずっと前から知っていたような。これが本作の主人公の名。

ばるぼら。彼女は女神ミューズ、比喩ではなく本当の女神ミューズ。そんな彼女が、流行作家の美倉洋介に出会うところから物語は始まる。この美倉洋介という男、異常性欲の持ち主で、デパートのマネキンに恋したり、雌犬を愛してしまったりと、ずいぶんとサイコ。見た目は、あきらかに澁澤龍彦を意識している。

この物語は、美倉洋介の栄枯盛衰、つまり、ばるぼらとの出会いと別れを、様々なエピソードを交えつつ描いていく。ばるぼらを他の芸術家に取られそうになって、嫉妬してみたり。また、結婚しようとして失敗したり。そして、この物語を結末まで読んだところで、読み手は、もしかしたら美倉洋介が描いた幻想に、ひたすらに付き合わされたのではないかと気づかされる。もしくは、手塚治虫自身の妄想ではと。

女性で失敗された経験がある方は一読を。





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【手塚治虫】キャプテンKen

手塚マンガの中でも特別にフェティッシュで倒錯的魅力あふれる作品。

火星を舞台にしたSF(と云えば、タイムパラドックス!)&西部劇もの。火星に移住しはじめた人類は、先住民である火星人と争っており、これは白人-インディアンの構図。火星人と人類の戦争が、ストーリーの中核にあるわけだが、この物語はそれだけでは語れない。

火星に移住している星野一家のもとに、地球からやってきた水上ケンという美少女。彼女が火星に来たのと同時期に火星に現れた、さすらいのガンマン風の馬に乗った少年キャプテンケン。この二人が瓜二つなのだ。性別が違うのだが、同一人物ではないか?というサスペンスが盛り込まれる。加えて、男装の麗人?女装の美少年?という艶かしい魅力の香りが立ち昇る。

水上ケンが立ち去った方向から、馬に乗ったキャプテンケンが現われたり、キャプテンケンが腕を怪我したら、水上ケンも同じところを怪我していたり…そして、二人は同時になかなか姿を見せない。思わせぶりな伏線。

このトリックは、読者の間で話題となり、連載時には、キャプテンケンの正体を当てる懸賞クイズが行われたそうだ。「キャプテンケンは、水上ケンと兄弟だ!」「水上ケンそっくりに作られたロボットだ!」「水上ケンとキャプテンケンは同一人物だ!」などなど。

キャプテンケンが星野家の二階の水上ケンの部屋へ忍び込む場面、キャプテンケンのポケットから落ちる女モノのハンカチ。ここから、深読みしたキーワードは、時間を超えた近親相姦であり、これがキャプテンケンと水上ケンがそっくりな理由でもある。

あえて手塚が曖昧に描いたのは、子供向けでは刺激が強すぎるからか、手塚自身のリビドーを隠そうとしたためか…しかし、そんなことはどうでもいい。手塚のフェティッシュでエロチックな魅力は、ストーリーをごまかそうとも、あの線描から自然と匂いたってくる。

そして、実はこの作品の中で、一番フェティッシュな魅力を爆発させているのが、キャプテンケンが乗るアロー号というロボット馬だという罠。本物の馬ではなく、ロボット馬だという設定が、艶かしさに不可避の魅力をプラスするという不思議。





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【手塚治虫】きりひと讃歌

裏ブラックジャック。社会派的色合いが強い作品となっており、手塚お得意の医学系の作品なのだが、それだけに収まらないのが、手塚治虫の怖いところ。

犬に似た容貌になり、ついには死に至るという奇病「モンモウ病」をめぐるこの物語は、どこを切ってもグロテスク。描写もグロテスクではあるが、それに加えて描かれる人間のすべてが、非人間で残酷で変態でキチガイで…と嫌悪しつつも、これも人間の一面だと認めざるを得ない自分の内面が見えてしまうグロテスク。間違いなく読むと胸がムカムカする。

このマンガが描かれた1970年代といえば、全共闘が大きな社会問題になった年。権威の象徴は東大医学部であり、このマンガにも登場するように、若い医師たちの反乱が東大紛争の発端にあった。この作品では、これら社会背景を設定として生かしている。しかし、実のところ、主人公の桐人がモンモウ病に冒され、次々と流転していく過程が、前半のリアリティを殺してしまっている。

しかし、このリアリティを欠いた桐人が流転していく部分にこそ、もっとも手塚らしい魅力がつまっている。特に印象に残るのは、麗花の人間てんぷら。何度読み返しても、彼女があっけなく死ぬシーンは、胸が抉られる。手塚のダークサイドがモロに出てしまった部分。トラウマになること必至だが、自分にとっての魅力はここ。

手塚のダークサイド、悪のフォースをじっくりと味わおう。





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【手塚治虫】未来人カオス

「友情を信じる神と信じない神(悪魔)との確執に翻弄される二人の男の物語」という大きな本筋がありながらも、実際には本筋を忘れてしまうくらいに、スペースオペラ的な物語の側面が強くなり、そして本筋を忘れてしまえば、だんだんと面白くなるという不思議な作品。

手塚が大きなテーマにしようとした「友情」は、第一部で完(ストーリー的に決着つかず)になっているので、このテーマだけでこの作品は語れない。テーマを抜いても面白い…というか、キャラクターが動き出す魅力がある。大河ドラマ・スペースオペラとして、その後の展開もすごく気になるところだが、物語のカタストロフィを待つよりも、この作品について云えば、このまま終わってよかったのかもしれん。

SF的な世界観やトリッキーな設定を楽しむというよりも、相変わらずの手塚節で描かれる人物描写やドラマにハートを持っていかれる。主人公の敵である大郷譲。物語が進むにつれ、彼にだんだんと感情移入していくようできているストーリーと人物描写の妙に脱帽間違いなし。

手塚の作品のなかでは有名な作品ではないし、間違いなく中途半端に終わった(終わらされた)作品ではあるのだが、隠れた佳作といっても過言ではないだろう。

主人公である須波光二がカオスになったあとの髪型がなかなか好き。





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8つの能力 マルチ能力理論

ハワード・ガードナーのマルチ能力理論 Multiple Intelligencesによると、人間には誰でも8つの領域で、どれか優れた能力を持っているそうだ。鉄腕アトムは、7つの威力だけれども…人間はひとつ多くて、次の8つの能力。

1:言語能力
2:論理的/数学的能力
3:空間能力
4:身体/運動能力
5:音感能力
6:人間関係形成能力
7:自己観察/管理能力
8:自然との共生能力

ちなみに7つの威力は、善悪を見分けられる電子頭脳、60ヶ国語を話せる人工声帯、普通の千倍も聞こえる耳、サーチライトの目、10万馬力の原子力モーター、足のジェットエンジン、お尻からマシンガン。(設定は時代により変わっているらしいが…)



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手塚治虫のMW ムウが映画化だが…

手塚治虫作品の中でも異色というか異形というか、徹底して自らの持つイメージを裏切ろうとして描かれた作品のMW ムウが映画化。キャストなどイロイロと突っ込みたいところはあるのだが…しかし、なにより、この作品から同性愛を抜いてどうするのだ!?アクションを多用したエンターテインメント作になるということだが、主役である結城美知夫は、その名のとおり「美」&「知」があってこそのキャラクターなのだ。うーん。
映画『MW』公式サイト



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宝塚~神戸~大阪の旅。

宝塚市立手塚治虫記念館宝塚では手塚治虫記念館へ。生誕80周年記念イベント開催中。アトムとレオ、そしてブラック・ジャックがお出迎え…B.J氏はまったく歓迎ムードな表情ではありませんでしたが。

海老マヨネーズあえ昼食は神戸。南京町の中華街。メインストリートは修学旅行生でごちゃごちゃ…写真は、通りから一本横にそれたところにある小小心縁というお店。メイン+ご飯、スープ、お漬物と、簡単なランチだが、なかなかに旨い。

串あげ午後からは大阪で古着屋を巡る。巡り巡って、北から南…辿り着いたのは、通天閣のお膝元は新天地のじゃんじゃん横丁にある串かつのお店てんぐ。旨すぎる!もちろん気取った店ではありませんし、珍しい具材があるわけでもない。シンプルに串かつを味わうにはいい。新天地の雰囲気も同時に味わえる。キャベツもバリバリとたっぷり頂きました。





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