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【手塚治虫】MW

このマンガのタイトルとなっているMW(ムウ)とは、戦争用の兵器として開発された毒ガスの名前。このMWにより島民が全滅したとある島で、偶然にも生き残った二人の少年を主人公に、物語は進められていく。
成長した少年たち。その一人結城美知夫は、普段は銀行員として真面目に働いるのだが、その正体は冷酷な殺人鬼。もう一人の男、賀来は島でのショックを癒すために教会に身を投じ、神父となっている。

殺人鬼という裏の顔を持つ結城美知夫だが、賀来には心を許しており、また体も許し(同性愛)、毒ガスの島から二人だけが生き残ったという共同体的意識からか、唯一無二の関係となっているのだ。毒ガスの難を逃れ生き残ったとはいえ、毒ガスの影響で肉体的に精神的に蝕まれていく結城美知夫。殺人鬼となった彼の真の目的は、毒ガスMW漏洩事故の責任者とその家族を、次々と殺害していくことにあったのだった。

この作品が手塚治虫のマンガの中でも異色なのは、手塚自身がこれまでのイメージを捨て(いまだに鉄腕アトムのイメージは強いわけだが)、徹底的に悪を描こうとしたことにある。またその悪の根源である、主人公の結城美知夫のキャラクターが非常に特異だということ。
このマンガが連載された当時の時代と比べ、同性愛についての理解が進んでいる現代であっても、メジャーなマンガ家がメジャーな紙面で、ストレートに同性愛の男二人を主人公に据えたマンガはなかなか見当たらない。連載当時、このマンガのインパクトがどんなだったのだろうか。
結城が服を脱ぎ捨ててベッドに横になり、賀来を誘惑するシーンなどは、衝撃的であり、手塚の本気度がよくわかる。

同性愛というある意味でのギミックだけがウリというわけではない。結城美知夫が行う巧妙な犯罪描写の素晴らしさや、毒ガスMWを取り巻く政府レベルでの陰謀を背景とした読み応えのあるストーリー、テンポのよい展開で、ぐいぐいと物語に引き込まれる。また、同時に読者は、結城美知夫という人物自身の魅力、美貌と明晰な頭脳に、引き込まれていくのだ。

良心のかけらも感じられない結城美知夫。彼の良心の部分をすべて背負うかのような、いわば結城の影(といより光か)ともいえるのが、もう一人の主人公である賀来神父。彼が代表するのは、人間の弱さや、人の心にひそむ原罪の意識。結城美知夫が悪の道に進んだのは、自分にも原因があると考え、更生させようと考える賀来神父。しかし実のところ、結城を愛し、その関係から逃れられない賀来神父。結城を救うという思いは、ただ彼と一緒にいたいがための言い訳にすぎない。賀来神父の良心の光は、結城美知夫を照らし出しすのだが、その結果は結城の闇をますます濃くするだけ。

ラストの思わせぶりなシーンを見せられると、もっと読みたい!と思ってしまうのが人情。賀来神父を失った結城美知夫に行く先はあるのか?ただただ暴走と破滅のみが待っているのか?手塚自身が「描き切れなかった」と語っていることから、この後もいろいろな展開が考えられていたことを想像すると、妄想が膨らむ。禁断のピカレスク・ロマンの大傑作。必読。






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